数学の勉強を進めるうえで、最も重要なのは「基礎」を本質的に理解し固めることです。基礎が不安定なまま、標準や応用レベルの問題に挑んでも、途中で手が止まったり、うまく解けなかったりして、なかなか実力が伸びていきません。そこでおすすめしたいのが『入門問題精講』です。この参考書は、数学の基本的な考え方や解き方を、一から学べるようになっています。「まずは基礎を固めたい」「入試レベルの問題に進む前に準備をしておきたい」という人にピッタリの内容です。特に、塾などに頼らず独学で基礎から進めていきたい人にとって心強い一冊です。
『入門問題精講』は、選び抜かれた必要最低限の問題で、無駄なく効率的に基礎力をつけることができます。計算の流れや考え方のポイントもわかりやすく説明されていて、「数学の土台」をしっかり作れる構成です。この一冊を終えると、次のステップである入試基礎レベルの問題にも挑みやすくなり、『基礎問題精講』や『NEW ACTION FRONTIER(ニューアクション フロンティア)』といった入試基礎レベルの参考書に進む準備が整います。
この記事では、『入門問題精講』を使った基礎固めの方法や、次のステップに向けての効果的な進め方を紹介します。基礎をしっかり固めて次のレベルに進みたい人や、自分のペースで先取り学習を進めたい人にとって、大いに役立つ内容になっています。
また、他のおすすめ参考書や、問題精講シリーズを紹介した記事も投稿しています。是非合わせて確認してみてください。
入門問題精講の概要とおすすめの理由
『入門問題精講』は、旺文社の「問題精講シリーズ」の中でも、特に基礎をしっかり固めるための参考書です。一言でいうと、「数学の土台をがっちり固めるための参考書」です。
入門という名前から、誤解をしている人もいるかもしれませんが、決して簡単なだけの参考書ではありません。丁寧な解説、充実したコラムそして厳選された問題により、「最難関大学入試でも通用するような本質的な理解」につながる、本当の意味での基礎を学習できる参考書です。
2024.02.16に数学ⅢCが発売され、理系の人にとっては文句なしのシリーズになりました。文系の人はベクトルの部分だけ別の入門レベルの参考書が必要になりますが、その点を踏まえてもおすすめ度は非常に高いです。
著者・出版社とおすすめ度
〈おすすめ度:★★★★★〉
出版社:旺文社
著者:池田洋介(いけだようすけ)
サイズ:A5判
『入門問題精講』の構成と特徴【本質的な理解を促す充実した紙面構成】
〔導入・知識説明〕〔問題〕〔精講〕〔解答解説〕〔コメント〕〔コラム〕の6つのパートで構成されています。各パートがつながっており、独学でも無理なく基礎が身につく構成です。各ステップを通じて「わかった!」が増えることで、次のレベルに進む準備がしっかり整います。


〔導入・知識説明〕は講義部分で、数学の概念を本質的に理解できるように丁寧に説明されています。教科書よりよほどわかりやすいですし、入門レベルにありがちな、数学的な正確性が高くないということもありません。
〔精講〕では問題を解くためのポイントや、気をつけるべき点が解説されています。問題に取り組むうえでの方針が見えるため、ただ解くだけでなく、考え方のコツもしっかり学べます。
〔解答解説〕は、途中の計算過程までしっかり説明しているため、一人でも理解しやすいです。計算の手順を確認できるので、つまずきにくく、確実に力をつけていけます。
〔コメント〕や〔コラム〕では、解答の論理的な意味や考え方を補足説明しています。解法が「なぜそうなるのか」を理解できるため、納得しながら次の問題にも応用しやすくなります。
ページ数・問題数と価格
ⅠA、ⅡB、ⅢCそれぞれで、以下のようになっています。「本質的な理解」と「数学の土台を固める」ために厳選された問題が揃っています。問題は教科書の練習問題や章末問題レベルに相当する内容で、基礎をしっかり身につけることができます。問題数も程よく抑えられているので、無理なく進められ、重要なポイントを効率的に学べるようになっています。
●数学ⅠA 入門問題精講
【定価:1,320円】【総ページ数:360ページ】
単元 | 数と式 | 関数と関数のグラフ | 三角比 | 場合の数 | 確率 | 集合と論理 | データの分析 | 図形の性質 | 整数の性質 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
練習問題 | 15 | 15 | 12 | 11 | 12 | 7 | 6 | 7 | 10 | 95 |
応用問題 | 1 | 2 | 4 | 5 | 2 | 0 | 0 | 1 | 2 | 17 |
総問題数 | 16 | 17 | 16 | 16 | 14 | 7 | 6 | 8 | 12 | 112 |
●数学ⅡB 入門問題精講
【定価:1,430円】【総ページ数:392ページ】
単元 | 式と証明 | 複素数と方程式 | 図形と方程式 | 三角関数 | 指数関数・対数関数 | 微分・積分 | 数列 | 統計的な推測 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
練習問題 | 9 | 10 | 20 | 12 | 18 | 19 | 12 | 16 | 116 |
応用問題 | 0 | 1 | 3 | 7 | 2 | 7 | 7 | 0 | 27 |
総問題数 | 9 | 11 | 23 | 19 | 20 | 26 | 19 | 16 | 143 |
●数学ⅢC 入門問題精講
【定価:1,540円】【総ページ数:448ページ】
単元 | いろいろな関数 | 数列の極限 | 関数の極限と微分 | いろいろな関数の微分 | 微分法の応用 | 積分法 | 積分法の応用 | いろいろな曲線 | ベクトル | 複素数平面 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
練習問題 | 7 | 11 | 12 | 9 | 14 | 21 | 12 | 8 | 20 | 13 | 127 |
応用問題 | 0 | 1 | 0 | 1 | 3 | 4 | 3 | 2 | 2 | 4 | 20 |
総問題数 | 7 | 12 | 12 | 10 | 17 | 25 | 15 | 10 | 22 | 17 | 147 |
教科書レベルの基礎力を固める

入門問題精講は、「本質的な理解を進め、数学の土台を固める」ための参考書です。そのために厳選されている問題は、
- 練習問題:教科書の練習問題レベル
- 応用問題:教科書の章末問題レベル
です。練習問題では基本の計算や解き方を、応用問題ではもう少し踏み込んだ考え方を身につけられ、教科書の知識をより深く理解することができます。難しすぎないので、数学が苦手な人でも取り組みやすく、まずは基礎を確実に固めたい人にうってつけの内容です。
次のレベルに自信を持って進める
本書を学習することで、のちのちハイレベルな問題にも通用する土台が固まります。本書で培った基礎力が、最難関大学を目指す人にも役立つ「数学の土台」となるのです。教科書レベルなんか必要ないと切り捨ててしまわず、最難関大学志望の人も是非取り組みましょう。
『入門問題精講』の使い方
『入門問題精講』を有効活用して、基礎力を確実に固めるためにおすすめの使い方を紹介します。
まずは、〔導入・知識説明〕の部分をしっかりと読み込みましょう。たまに、説明の一部として例題が含まれていることがあるので、その場合には実際に手を動かして解いてみてください。
導入の内容が理解できたら、〔問題〕を解きます。このとき、少し考えてもわからなければすぐに〔解答解説〕をチェックしてかまいません。悩むのは5分までにしましょう。解答解説で、計算の手順や解き方、考え方を確認し、〔コメント〕や〔コラム〕で理解を深めるのが重要です。
初めはなかなかペースを作れないかもしれませんが、1日5題程度は進めていきたいところです。(もちろん、志望校や、取り組み始める時期によって必要なペースは変わります。)
本書は、教科書レベルの基礎的な問題が揃っているため、初めて学ぶ人でも無理なく進められる内容になっています。「どうしてこの解き方になるのか」を考えながら解いていくと、解法の流れがしっかり身につきます。 また、苦手な問題や間違えた問題には印をつけて、後で必ず復習することもポイントです。何度も復習することで曖昧な部分がしっかり定着し、基礎力が安定していきます。さらに、数日後や1週間後に同じ問題を解き直すと記憶が深まり、次のレベルに自信をもって進める基礎が整います。
『入門問題精講』の特徴と弱点
『入門問題精講』のメリット【基礎を確実に定着させる】
『入門問題精講』は、数学の基礎をしっかりと定着させるための参考書です。最大のメリットは、教科書レベルの基本問題が厳選されており、基礎的な解法の考え方を効率よく身につけられる点です。一般的な基礎参考書では問題数が多すぎて途中で挫折しやすいケースもありますが、本書は無駄を省いた構成で、学習に必要な問題のみが適切な量だけ収録されています。このため、基礎固めが無理なく進められます。また、解説が非常に丁寧でわかりやすいため、数学に苦手意識がある人でも独学で進めやすくなっています。
特に各問題には「なぜこの解法が必要なのか」「どうしてこう考えるのか」といった本質的な説明が含まれているため、単なる解法の暗記に終わるのではなく、解法の意図や考え方を理解しながら学習を進めることができます。この説明の充実度が基礎を固めたい人にとって大きなサポートとなり、わかりやすさを実感しやすい点が『入門問題精講』の強みです。問題が解けるたびに「どうしてそうなるのか」が納得でき、次に進む際の自信にもつながります。
さらに、無駄のない問題数が設定されているため、日々の復習にも取り組みやすいのが大きなメリットです。毎日少しずつ問題を解き、復習も兼ねて再度同じ問題に挑むことで、基礎力がしっかりと安定し、次のレベルにも無理なくステップアップできるようになります。また、復習がしやすいという点も、基礎学習を効果的に進めるために大変重要です。こうしたメリットを活かすことで、標準問題にもスムーズに進めるようになり、基礎を固めつつ学習の自信を持って進められる頼もしいサポート役になる一冊です。
『入門問題精講』の弱点
『入門問題精講』は、数学の基礎をしっかり身につけるのにとても役立つ参考書です。ただし、内容が基礎的なレベルに特化しているため、この本だけでは、入試レベルには少し物足りないところもあります。入試レベルの問題では、基本から少し踏み込んだ解き方や考え方が必要になることが多いので、基礎がしっかり固まった後は別の参考書へステップアップしていく必要があります。
また、全範囲が網羅されているわけではないことにも注意が必要です。絶対値、2重根号、三角形の成立条件、3項間漸化式、連立漸化式などは取り扱われていません。
これらを補う方法としては、まず『入門問題精講』で基礎を固めたうえで、『基礎問題精講』や『NEW ACTION FRONTIER』などの参考書に取り組むのがおすすめです。『基礎問題精講』は、標準レベルの問題を中心に集めてあり、基礎力が安定した人が取り組みやすい内容です。また、『NEW ACTION FRONTIER』も、基礎~標準レベルの問題が揃っていて、基礎を確認しながら標準問題の解き方も身につけやすい構成になっています。 『入門問題精講』でしっかり基礎を固めたあとに、これらの標準レベルの参考書に進むことで、入門問題精講で扱われていなかった内容を補完し、基礎から標準へスムーズに力をつけていくことができます。
『入門問題精講』の到達レベル
『入門問題精講』に取り組む目安
『入門問題精講』に取り組むべきなのは、「学校よりも先取りで学習を進めていきたい」「ほかの参考書などで勉強はしているけど成績アップにつながっていない…」と思ったときです。
先取り学習に利用する場合、中学数学の内容が一通り理解できていれば問題ありません。もし中学内容に不安がある場合には、『中学数学をひとつひとつわかりやすく。』などを使って短期間で中学内容を固めることにまずは集中してください。逆に、中学内容さえ固まっていれば、中学生であったとしても十分に活用して先取り学習を進めることが可能です。
受験の基礎固めとして利用するべき目安は、全統模試で偏差値45以下(進研模試で50以下)と考えておきましょう。この偏差値帯にいる人の場合、教科書レベルの内容が定着していない可能性が高いです。重要なのは、「解法の丸暗記」に走らないことです。「教科書レベルの内容なんかもうわかっている」と意地を張らずに基礎の本質的理解を深めてください。抜けていた部分の理解を進めることで、これまでの停滞が嘘のように大きく飛躍することにつながるはずです。
『入門問題精講』を終えた後の到達レベル
『入門問題精講』をしっかり学習することで、高校数学の基礎が安定します。それにより、模試でも基礎レベルの問題は確実に得点できるようになっているはずです。
結果として、全統模試で偏差値40~45程度、進研模試で45~50程度に到達できていると思います。
このレベルに達したら、『基礎問題精講』や『NEW ACTION FRONTIER』などの入試基礎~入試標準レベルの参考書へステップアップしてください。
『入門問題精講』の次にやるべき参考書【志望校レベル・文理別の学習ルート】
『入門問題精講』で基礎が身についたら、志望校に応じて次のレベルの参考書へ進むことになります。本来、一人一人の状況で全く変わってしまう参考書の選び方ですが、これまでの経験から「失敗しにくい一例」として参考書学習のルートをいくつか紹介していきます。よければ参考にしてください。
理系向け:志望校レベル別おすすめ参考書
最難関大学(東大・京大・東京科学大・阪大)志望の人
最難関大学を目指す場合には、基礎から標準を固めたうえで、さらに高度な応用力をつけることが大切です。最終的には『上級問題精講』や『新数学スタンダード演習』『やさしい理系数学』といったハイレベルな問題集を活用し、対応力をみにつける必要があります。
- 入門問題精講→NEW ACTION LEGEND→1対1対応の演習→新数学スタンダード演習→入試数学の掌握+新数学演習
- 入門問題精講→基礎問題精講→標準問題精講→文系数学の良問プラチカ+理系数学の良問プラチカ数学ⅢC→上級問題精講→入試数学の掌握+ハイレベル理系数学
これらのルートでいければ、柔軟な解法が求められる東大・京大レベルの問題にも確実に対応できる実力が身につきます。
難関大学(早慶上理・難関国公立)志望の人
最難関私立や難関国公立を目指す人には、入試標準から応用レベルの問題を徹底して演習することが必要です。そのため、以下のようなルートがおすすめです。
- 入門問題精講→NEW ACTION FRONTIER→1対1対応の演習→文系数学の良問プラチカ+理系数学の良問プラチカ数学ⅢC→新数学スタンダード演習
- 入門問題精講→基礎問題精講→標準問題精講→文系数学の良問プラチカ+理系数学の良問プラチカ数学ⅢC→新数学スタンダード演習
『新数学スタンダード演習』の代わりに、『やさしい理系数学』や『重要問題集』を使うのもありです。演習を進める中で時間配分や解答スピードを意識することで、試験本番に強い応用力が身につきます。
MARCH・関関同立・地方国公立大学志望の人
このレベル帯の大学を志望する場合は、標準レベルの問題の演習を積み、解法パターンの理解を深めることが効果的です。標準問題の解法を確実に身につけ、余裕があれば、応用問題に少し触れておくといいですね。
- 入門問題精講→NEW ACTION FRONTIER→文系の数学-重要事項完全習得編-+文系の数学-実戦力向上編-+数学Ⅲ-重要事項完全習得編-→Can Pass
文系向け:志望校レベル別おすすめ参考書
最難関大学(東大・京大・一橋大)志望の人
最難関大学を目指す場合には、基礎から標準を固めたうえで、さらに高度な応用力をつけることが求められます。最終的には『ハイレベル数学完全攻略』といったハイレベルな問題集を活用し、対応力をみにつけられると理想的です。
- 入門問題精講→NEW ACTION LEGEND→1対1対応の演習→文系数学の良問プラチカ→ハイレベル数学完全攻略
- 入門問題精講→基礎問題精講→標準問題精講→文系数学の良問プラチカ→ハイレベル数学完全攻略
数学への苦手意識が強い場合には、無理せず『文系数学の良問プラチカ』を完璧に仕上げるようにしましょう。
難関大学(早慶上理・難関国公立)志望の人
標準問題に慣れたうえで、応用問題にも対応する力が必要です。『文系数学の良問プラチカ』や『1対1対応の演習』の文系向け内容を活用し、文系数学の応用問題に慣れることが重要です。入試で頻出のパターンをしっかり押さえ、解答スピードを意識しながら演習することで、得点力を磨きます。
- 入門問題精講→NEW ACTION FRONTIER→1対1対応の演習→文系数学の良問プラチカ
- 入門問題精講→基礎問題精講→標準問題精講→文系数学の良問プラチカ
MARCH・関関同立・地方国公立志望の人
このレベル帯の大学を志望する文系の人は、頻出問題を中心に力をつけるのが効果的です。『文系の数学』や『Can Pass』などを使って、よく出題されるパターンや標準的な問題に対応できるようにしましょう。
- 入門問題精講→NEW ACTION FRONTIER→文系の数学-重要事項完全習得編-+文系の数学-実戦力向上編→理系数学の良問プラチカⅠAⅡBC→Can Pass
『入門問題精講』を使って数学の土台を固めきろう
『入門問題精講』は、高校数学の基礎を丁寧に固め、次のステップへ無理なく取り組める力を育てるように設計されています。数学の基礎が固まることで、標準レベルや応用問題にもスムーズに対応できるようになり、最終的には志望校レベルの問題に挑戦するために必要な確かな基礎が完成します。
数学の土台が固まったら、自分の志望校に合わせて次のステップへ進んでください。志望校や学部ごとに求められる数学のレベルは異なりますが、『入門問題精講』で固めたの基礎力があれば、自信を持って取り組めるはずです。
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