数学の参考書と言われた皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?「チャート式」「Focus Gold」などの網羅系の参考書を思い描く人が多いのかなと思います。
これらの網羅系参考書は、入試の典型問題を解くための定石を学ぶための参考書で、多くの学校で何らかの網羅系参考書が推奨されているはずです。
今回紹介する『数学の真髄 論理・写像』は、こうした網羅系の参考書や教科書では曖昧なままになっている”論理”について正面から向き合っている参考書です。
数学の真髄-論理・写像- の概要
出版社:ナガセ(東進ブックス)
著者:青木純二(あおきじゅんじ)
サイズ:A5判
定価:1,430円
総ページ数:224ページ
本書の目標
この参考書の目標は
- 論理の本質的な理解
- 実践演習を始める前の論理的思考力の養成
の2点にまとめられます。社会人になっても通用する本物の論理的思考力を身に着けるのにぴったりの1冊です。
本書の4つの特徴
論理の基本が身につく 講義
教科書や多くの参考書であいまいなままになっている論理に正面から向き合い、数学的文章の構造を基本から解説しています。(簡ではないので勘違いしないように!)
「命題」とは何か。「条件」とは何か。「かつ」と「または」とは。といったことを曖昧にせずに、数学の基本を固めていきます。
「解き方」ではなく「考え方」
レベルの高い問題に対し、意味を変えずにやさしい問題に帰着させるにはどうすればよいか についての考え方が詳しく解説されています。
公式を自作して使える ようになる
公式は暗記するものではなく、「意味を考えれば当たり前、いつでも作れる」という感覚を身につけ、入試問題に適用できるようになります。
論理的な答案作成能力が鍛えられる
厳選された実践問題で、講義で学んだ考え方をがっちり鍛えていけます。
使うべき人は?
本来は、すべての高校生に学んでほしい内容です。しかし、数学の論理は英語の文法のように「知識ゼロでもなんとか進めていける」というものではありません。
本書を有効に活用できるのは、著者的には
- 東大/京大といった難関大学に合格したいと強く思っている
- 教科書の内容は一通り頭に入っている
- 教科書の章末問題や同等のレベルの問題はスラスラ解ける
という3つの条件を満たしている人です。
ですが、強い意志とある程度の知識がないと、心を折られることになってしまいます。
しかし、実際に本書に取り組むべきなのは「東大・京大といった最難関大学志望で、入試標準レベルの問題はサッと解ける」という人に限られるかなと思います。
もちろん、これ以外の大学志望の人でも、入試標準レベルが身についており、大学入学後に数学をしっかりと学びたいという意思が高ければ取り組む価値は十分あります。ただし、他の科目とのバランスには十分注意してください。あくまでも、「より深い考え方」を手にするための参考書であり、本書に取り組んだからと言って得点力アップに直結するとは限りません。
当然、教科書レベルが怪しい人は絶対に手を出さないようにしましょう。
論理を学べるほかの参考書はあるの?
本書と同様に、論理を学べる参考書として、以下の2つがあります。
総合的研究 問題文の読み取り方
出版社:旺文社
著者:古賀真輝(こがまさき)
総合的研究 論理学で学ぶ数学
出版社:旺文社
著者:長岡亮介(ながおかりょうすけ)
まとめ
今回紹介した3冊の参考書はなかなか網羅系参考書ではしっかり勉強できない「論理」をメインテーマに扱っています。難関大学志望者には、どれか1冊は取り組み、社会人になってからも役立つレベルの論理的思考力を手に入れてください。
3冊すべておすすめの参考書です。
青木先生は、 数学の問題のほとんどは「ややこしいものを意味を変えずに簡略化する」というゲームだ、とおっしゃっています。本当にその通りだと思います。
私自身も、社会に出てから「複雑なものを本質をとらえて簡略化していく力」が問われることを実感しています。
高校生の皆さんには、是非その力を鍛えるために「論理」の勉強をする時間の確保をしてほしいと思います。少し遠回りに感じるかもしれませんが、必ず未来を切り開くための土台となるはずです。
※2024.07.29に数学の真髄 ベクトル が続編として発売になりました。そちらの紹介記事も投稿していますので、良ければそちらも確認してください。
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