皆さんは、「チャート式」と言われてどのようなイメージを持たれるでしょうか?「網羅系に分類されるシリーズ」「高校で副教材として配られる」「ぶ厚すぎてやる気でない(笑)」などでしょうか。
確かに、「チャート式」というと網羅系に分類されるものが有名ですが、実は多くの種類が存在しています。ここでは、チャート式の各種類について、比較していきます。参考書選びの参考にしてください!
チャート式以外の参考書も含めたオススメについての記事も投稿しているので、良ければこちらも参考にしてみてください。
網羅系の種類と比較
いわゆる網羅系といわれるシリーズから見ていきたいと思います。私の独断でおすすめ度も載せているので良ければ参考にしてください。
網羅系の種類
網羅系と呼ばれるのは易しいほうから順に、白・黄・青・赤の4種類です。シリーズのいずれかが「学校で採用されている!」という人もいると思います。それぞれの特徴をぜひ確認してみてください。
チャート式 基礎と演習 (白チャート)
〈おすすめ度:★★★★☆〉
最も基本的なレベルですが、入試の基礎を固めるには十分な内容になっています。
特に、コラム・まとめが充実しており、基本的な考え方に対する解説が非常に丁寧なのが特徴です。レイアウトがほかのチャートシリーズより1段レベルが高く、とても見やすくなっているのもポイントといえます。
難関大学受験には対応できませんが、共通テストに対応できる実力はこれ1冊でも十分にみにつけられます。数学は苦手だが入試で必要という人におすすめです。
チャート式 解放と演習 (黄チャート)
〈おすすめ度:★★★★☆〉
多くの受験生にとって必要十分なレベルと問題数を備えています。
難関大学志望の人が使っても十分な効果を得られる内容で、網羅性も十分あります。最難関大学志望者は「物足りなさ」を感じるかもしれませんが、網羅系参考書としての使命は十分に果たせます。網羅系4冊の中で、最も幅広い層の受験生におすすめできる1冊です。
一方で、白チャートよりも教科書内容の詳しい解説が減り、問題数は増えるので、「数学苦手!」という人が手を出すと挫折につながる可能性があるので注意が必要です。
チャート式 基礎からの (青チャート)
〈おすすめ度:★★★☆☆〉
網羅性はシリーズの中で最も高く、到達上限のレベルの高さは黄チャートよりも1段上になっています。
最難関大学志望者が参考書1冊だけで進めていくなら使いこなしたい1冊です。ただし、問題数の多さや問題レベルの高さから、多くの人にとっては消化不良になるリスクが高いと思います。
やり切った時の到達レベルは間違いなく高く、とても素晴らしい1冊ではあります。使用する際は、本当に自分のレベルにあっているかの検討を十分に行うようにしてください。
チャート式 (赤チャート)
〈おすすめ度:★☆☆☆☆〉
以前よりは易しめになっていますが、それでもまだまだ「ハイレベルすぎて正直扱いづらい」とかんじます。
超進学校と呼ばれる高校で、学校採用になっていることもあるシリーズですが…。
本書では、基礎から入試標準レベルの例題が絞られ、難関大学レベルの演習量がやや多くなっています。高1・高2生が基礎を固めるにも難関大志望の受験生がハイレベルな演習をするにも一応使えますが、それぞれにより適した参考書が多く存在します。そのため、本書を利用する必要性は全くありません。
コラムの内容も大学入試で知っておく必要のある範囲を大きく超えていて、完全に趣味の世界です。「数学マニア専用」だと思っていいですね。
問題数とレベルの比較
網羅系4種類について、問題数やレベル感がどうなっているかをまとめて比較しやすくしています。購入を決める前に、本当に自分に合っているかを確認しておくようにしてください。
問題数の比較
問題数については以下のようになっています。それぞれ、文系(ⅠAⅡB)と理系(ⅠAⅡBⅢC)それぞれで、解くことになる合計の問題数をまとめました。
どれを使うにしても、それなりの問題数になっています。取り組む際は、覚悟を決めておきましょう。勉強開始の時期によっては、網羅系の参考書での学習をメインにはしないという決断も必要になります。
文系 | ||||
---|---|---|---|---|
例題 | 556 | 600 | 706 | 850 |
練習問題 | 556 | 600 | 706 | 491 |
Ex. | 320 | 506 | 463 | 228 |
総合演習 | 40 | 62 | 125 | 94 |
総問題数 | 1472 | 1768 | 2000 | 1663 |
理系 | ||||
---|---|---|---|---|
例題 | 838 | 931 | 1100 | 1297 |
練習問題 | 838 | 931 | 1100 | 800 |
Ex. | 467 | 791 | 760 | 353 |
総合演習 | 48 | 82 | 201 | 165 |
総問題数 | 2191 | 2735 | 3161 | 2615 |
レベル帯の比較
レベル感は下の表のようになっています。偏差値帯、到達大学ラインはこれまでの指導経験をもとにした私の主観ですが、大きく外れてはいないはずです。参考値として確認してみてください。
偏差値帯 | 到達可能大学 | |
---|---|---|
進研:45~60 全統:40~50 | 国公立:共通テスト重視の大学 私 立:日東駒専, 産近甲龍 | |
進研:55~70 全統:50~65 | 国公立:旧帝大の下位 私 立:GMARCH, 関関同立 | |
進研:60~ 全統:55~75 | 国公立:最難関 私 立:最難関 | |
進研:70~ 全統:65~ | 国公立:最難関 私 立:最難関 |
網羅系を使う時のポイント
大きなポイントは2つ。”使い方” と “レベルがあっているか”です。
ここまで見てきた4種のチャート式は、その網羅性の高さ(問題数の多さ)のため、途中で挫折してしまいがちです。取り組む際には、
- 1冊をきっちりとやりきる
- うまく抜粋して使いながら、基本は辞書的に使う
のどちらの使い方にするかあらかじめ決めておくと安心です。
チャート式に限らず、網羅系参考書では、自分に合っていないレベルを選んでしまう人が毎年後を絶ちません。学校採用の場合は仕方ないこともありますが、見栄を張ってレベルの高いシリーズを使うことがないように気を付けてください。
また、 網羅系参考書を進める目的はあくまでも、『入試問題を解くときに使う道具を集める』ことです。“1冊仕上げても、入試問題がスラスラ解けるようになるわけではない”ということも理解しておく必要があります。過去問を始める時期(遅くとも高3の7月)から逆算して「いつまでに仕上げるのか」、そのために「どれくらいのペースで進める必要があるのか」を考えて選ぶようにしてください。
特化系の種類と比較
ここでは、特化系(非網羅系)のシリーズについてみていきます。あまり知られていないものもあるので、ぜひ確認してみてください。おすすめ度も載せていますので、そちらも参考にしてみてください。
チャート式 大学入学共通テスト対策 (緑チャート)
〈おすすめ度:★★★☆☆〉
網羅系でないシリーズの中では最もメジャーな1冊。学校採用になっている学校も比較的多い印象です。全問マーク式であるため、穴埋めのコツ、穴埋め式の考え方の習得に効果的です。使い方の説明などもあり、改定により使い勝手はよくなっています。しっかり仕上げれば共通テストやマーク式の中堅私立大学の入試で高得点を狙うことも可能です。なのですが、「過去問で十分」かなと私は思います。
短期完成 大学入学共通テスト対策 (黄緑チャート)
〈おすすめ度:★★☆☆☆〉
改定前の『35日完成!大学入学共通テスト対策』に該当します。「緑チャートの基本例題と重要例題を集めてきたもの」だと考えるとイメージしやすいでしょうか。ⅠAが35講、ⅡBCが39講の構成になっており、共通テストに向けた最低限の対策ができます。
ⅠA、ⅡBCのどちらかだけに不安がある、どちらかだけを受験するという人は、使用を検討してみてもいいかもしれません。ただし、緑チャートと違い、到達点はよくて共テ6割です。ほんとに数学が苦手だけど共通テストでなんとか形にはしておきたいという人が対象になります。
絶対に身につけたい 数学の基本 (スカイチャート)
〈おすすめ度:★★☆☆☆〉
公式には『スカイチャート』となっていますが、『そらチャート』と呼ばれることも多い1冊です。完全に教科書レベルの内容に振り切った1冊で、問題数もかなり絞られています。「定期テストに向けて必須のポイントのミサっと見直したい。」「黄チャートを進めようと思ったが全く分からなくて途方に暮れてしまった」という人向けです。
ただし、解説の詳しさなどは白チャートの方がはるかに優れています。このタイプの参考書を探すのであれば、正直チャート式以外の参考書を選択したほうが効率的な場合も多いです。
入試必携168 (紫チャート)
〈おすすめ度:★★☆☆☆〉
文系対策/理系対策が存在します。ハンドブックとうたっているように、青チャートから最低限の定石をピックアップしてくれているイメージです。個人的には、苦手な人にはレベルが高すぎ、そうでない人には内容が薄い…はっきり言うと中途半端な感じがしています。
入試によく出るこれだけ70題!
〈おすすめ度:★☆☆☆☆〉
こちらも紫チャートとして扱われることもあるシリーズです。最低限の入試頻出問題に絞って、必須定石が定着しているかを確認できます。ただ、厳選されすぎていて演習量が絶対的に不足してしまうので、使い勝手がいいとは言えないです。
数学難問集100 (黒チャート)
〈おすすめ度:★☆☆☆☆〉
赤チャートから基本的な問題をそぎ落としたイメージです。すべての問題がハイレベルな難問で構成されています。基本的に手を出す必要のない参考書といえますが、難解な問題に挑戦して叩きのめされたいという人は一度挑戦してみるのもありです。
表紙には「新課程入試対応」となっていますが、『現行課程対応ではない』ので注意してください!
医学部入試数学 (黒チャート)
〈おすすめ度:★★☆☆☆〉
こちらも黒チャートと呼ばれる1冊です。難問集とは違い、難問ばかりではないですが、全国の医学部の入試問題を集めているので、どの問題も手ごたえは抜群です。 一方で、全国の医学部の入試問題の集合体であるため、各大学の傾向に合わせた対策をするには不向きです。
青チャートを活用する~読んで理解 解いて爽快~大学入試数学テーマ30
〈おすすめ度:★☆☆☆☆〉
理系専用の1冊です。青チャートの例題、演習問題をテーマ別に再構成し分野横断的な練習ができるようになっています。チャート式シリーズだけで数学を仕上げていきたい人ならありかも?
結局どれがおすすめなの?
まず特化系についてです。特化系は正直なところ選ぶメリットが少なく、特別おすすめというのはありません。どれも、必要性を感じたときに、ほかの参考書と十分比較したうえでうまく活用できればいいと思います。あえて言うなら、緑チャートが使い勝手がよく、比較的おススメです。
網羅系では、白チャートまたは黄チャートがおすすめです。(どちらが合うかは、現状のあなたの学力や時期、志望校などによって変わってきます。)
網羅系の参考書は、それだけで受験勉強が完成するものではなく、あくまでも入試問題と戦うための装備集めです。遅くとも、ⅠAⅡBC(ベクトル)については高校2年生の秋までに、ⅢCについては3年生の5月までに終えて、いったん志望校の過去問を確認し、レベル差を埋めるために必要となる次の参考書や問題集に進まなければなりません。
このため、難しすぎるものを選ぶよりも、確実に定着させることができるレベルを選ぶことが重要です。
多くの学校で採用されているため、「青チャートはダメなの?」という疑問もわいてくると思います。もちろん青チャートでも問題はありません。が、青チャートは
- 例題とExercisesの難易度差が大きい
- 例題、練習の多くは黄チャートと被っている(もちろんすべてではありません)
- Exercises、総合演習だけでは演習不足のため、けっきょく別の問題集も必要なことが多い
という弱点を持っています。
そのため、私としては「青チャートはもちろん素晴らしいけど、例題と演習だけやるなら黄チャートで十分だし、けっきょく演習量はほかの問題集で補う必要があるのならば、これから買うなら無理に青チャートにするよりも白や黄を選ぶほうがいいよね。」となるのです。
みんな使っているから自分も青チャートと安易に決めず、自分のレベルに合っているかをしっかりと確認したうえで、白・黄・青のどれを選ぶか決めるようにしてください。
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