文字係数の1次方程式
文字係数の1次方程式
$x$ の係数が文字($a$ など)の場合、その文字の値が $0$ かそうでないかで場合分けをする必要がある。
例として $ax=1$ という方程式の場合を考えてみよう。
$a\neq 0$ のときは両辺を $a$ で割ることで、$x=\dfrac{1}{a}$ となる。
一方、$a=0$ である場合には割ることが許されない。そのため、$a=0$ の場合を別枠で考えることが必要になるのである。
今回の例の場合で考えると、$0\cdot x=1$ となる。このため、左辺は常に $0$ となってしまい、これを満たす $x$ は存在しえない( 解なし )。
文字が係数である場合に、安易に文字で割ってはいけないということをきちんと意識に刻んでおいてほしい。
文字係数の連立1次方程式
文字係数を含む場合でも、加減法または代入法により1文字ずつ消去していくという、基本的な連立方程式の解き方は中学で学んだものと変わらない。
文字の種類がどれだけあったとしても、3文字→2文字→1文字と1次方程式になるまで1文字消去を繰り返していけば連立方程式を解くことができるのである。
文字係数の1次不等式
係数に文字を含む場合には、文字の値によって場合分けが必要である。これについては方程式の場合と同じである。
しかし、方程式の場合と異なり文字の取る値が正か負かも考えることが必要となる。負の数で両辺を割ると不等号の向きが逆転するからである。
方程式のとき以上に、安易に文字で割ってはいけないということを意識することが大切である。
例題に挑戦しよう
≪問題≫
[1] $a,\ b$を定数として、以下の方程式を解け。
(1) $ax+2=a-1$
(2) $(a^2+1)x=3$
(3) $a^2x+3=9x+a^2-a-9$
(4) $x+1=a^2x+a+b^2$
[2] $a$ を定数とするとき、以下の方程式を解け。
(1) $\begin{cases}
ax+4y=1&\cdots ①\\
x+ay=\dfrac{1}{2}&\cdots ②
\end{cases}$
(2) $\begin{cases}
x+2y+3z=1&\cdots ①\\
3x+y+2z=0&\cdots ②\\
2x+3y+z=-13&\cdots ③
\end{cases}$
(3) $\begin{cases}
ax+y=1&\cdots ①\\
ay+z=2&\cdots ②\\
-x+az=3&\cdots ③
\end{cases}$
[3] 以下の問いに答えよ。
(1) $a,\ b$ を定数として、不等式 $ax\lt b$ を解け。
(2) $ax\gt a^3$ が $x\gt 9$ を解とするとき、 定数 $a$ の値を求めよ。
(3) $p(x+1)+q(x+2)\gt 0$ を満たす $x$ の範囲が $x\lt 1$ であるとき、$p(1-x)+q(2-x)\gt 0$ を満たす $x$ の範囲を求めよ。ただし、$p,\ q$ は定数とする。
≪解答・解説≫
[1]
(1)※ $a\neq 0$ かどうかで場合分け
$\begin{cases} \boldsymbol{a\neq 0}\ のとき&\boldsymbol{x=\dfrac{a-3}{a}}\\[5pt] \boldsymbol{a=0}\ のとき\\[3pt] \quad 0\cdot x+2=0-1\ より&\boldsymbol{解なし} \end{cases}$
(2)※ 実数の2乗は常にせいである。
$a^2+1\gt 0$ より、
$(a^2+1)x=3\Leftrightarrow\boldsymbol{x=\dfrac{3}{a^2+1}}$
(3)※ 同類項を整理することで、$(1)$に帰着
$\begin{eqnarray} &\ &a^2x+3=9x+a^2-a-9\\ &\Leftrightarrow&(a^2-9)x=a^2-a-12\\ &\Leftrightarrow&(a+3)(a-3)x=(a+3)(a-4) \end{eqnarray}$
より、
$\begin{cases} \boldsymbol{a\neq\pm3}\ のとき&\boldsymbol{x=\dfrac{a-4}{a-3}}\\[5pt] \boldsymbol{a=3}\ のとき\\[3pt] \quad 0\cdot x=-6\ より&\boldsymbol{解なし}\\[5pt] \boldsymbol{a=-3}\ のとき\\[3pt] \quad 0\cdot x=0\ より&\boldsymbol{解は全ての実数} \end{cases}$
(4)※ $b$ の値によっても場合分けが必要であることに注意
$\begin{eqnarray} &\ &x+1=a^2x+a+b^2\\ &\Leftrightarrow&(a^2-1)x=ab^2-a-b^2+1\\ &\Leftrightarrow&(a+1)(a-1)x=(a-1)(b^2-1)\\ &\Leftrightarrow&(a+1)(a-1)x=(a-1)(b+1)(b-1) \end{eqnarray}$
より、
$\begin{cases} \boldsymbol{a\neq\pm 1}\ のとき&\boldsymbol{x=\dfrac{b^2-1}{a+1}}\\[5pt] \boldsymbol{a=1}\ のとき\\[3pt] \quad 0\cdot x=0\ より&\boldsymbol{解は全ての実数}\\[5pt] \boldsymbol{a=-1}\ のとき\\[3pt] \quad 0\cdot x=-2(b+1)(b-1)\ より\\[3pt] \qquad\boldsymbol{b=\pm 1}ならば&\boldsymbol{解は全ての実数}\\[3pt] \qquad\boldsymbol{b\neq\pm 1}ならば&\boldsymbol{解なし} \end{cases}$
[2]
(1)
$①\times a-②\times 4$ より
$(a^2-4)x=a-2\Leftrightarrow (a+2)(a-2)x=a-2\cdots ③$
$①$ より
$y=\dfrac{1-ax}{4}\cdots ④$
[ⅰ] $a\neq\pm2$ のとき
$③$より $x=\dfrac{1}{a+2}$
これと$④$より
$y=\dfrac{1}{4}-\dfrac{a}{4}\cdot\dfrac{1}{a+2}=\dfrac{1}{2(a+2)}$
[ⅱ] $a=2$ のとき$③$より $x$ は全ての実数
これと$④$より
$y=\dfrac{1-2t}{4}\ (t:全ての実数)$
[ⅲ] $a=-2$ のとき$③$より $x$ は存在しえない
以上より、
$\begin{cases} \boldsymbol{a\neq\pm2}\ のとき&\boldsymbol{x=\dfrac{1}{a+2},\ y=\dfrac{1}{2(a+2)}}\\[5pt] \boldsymbol{a=2}\ のとき&\boldsymbol{x=t,\ y=\dfrac{1-2t}{4}\ (t:全ての実数)}\\[5pt] \boldsymbol{a=2}\ のとき&\boldsymbol{解なし} \end{cases}$
(2)※ 3元連立方程式の基本解法
$①\times 3-②$ より $5y+7z=3\cdots ④$
$①\times 2-③$ より $y+5z=15\cdots ⑤$
$⑤\times 5-④$ より
$18z=72\Leftrightarrow z=4$
これをに$⑤$代入し
$y+5\cdot 4=15\Leftrightarrow y=-5$
よって $①\times 3-②$ より
$x+2\cdot (-5)+3\cdot 4=1\Leftrightarrow x=-1$
$\therefore$ $\boldsymbol{(x,\ y,\ z)=(-1,\ -5,\ 4)}$
(3)
[Ⅰ] $a=0$ のとき $(x,\ y,\ z)=(-1,\ 1,\ 2)$
[Ⅱ] $a\neq 0$ のとき
$②-③$ より $x+ay=-1\cdots ④$
$①\times a-④$ より
$(a^2-1)x=a+1\Leftrightarrow (a+1)(a-1)x=a+1\cdots ⑤$
ⅰ) $a\neq\pm 1$ のとき
$⑤$より $x=\dfrac{1}{a-1}$
よって、$①,\ ③$ より $y=1-\dfrac{1}{a-1},\ z=3+\dfrac{1}{a-1}$
ⅱ) $a=1$ のとき$⑤$より $x$ は存在しえない
ⅲ) $a=-1$ のとき$⑤$より $x$ は全ての実数
これと$①,\ ③$より
$y=1+t,\ z=3+t\ (t:全ての実数)$
以上より、
$\begin{cases} \boldsymbol{a=0}\ のとき\qquad\boldsymbol{(x,\ y,\ z)=(-1,\ 1,\ 2)}\\[3pt] \boldsymbol{a=1}\ のとき\qquad\boldsymbol{解なし}\\[3pt] \boldsymbol{a=-1}\ のとき\\[3pt] \qquad\boldsymbol{(x,\ y,\ z)=(t,\ 1+t,\ 3+t)\ (t:全ての実数)}\\[5pt] \boldsymbol{a\neq0,\pm 1}\ のとき\\[3pt] \qquad\boldsymbol{(x,\ y,\ z)=\left(\dfrac{1}{a-1},\ 1-\dfrac{1}{a-1},\ 3+\dfrac{1}{a-1}\right)}\\[5pt] \end{cases}$
[3]
(1)※ $b$ の値によっても場合分けが必要であることに注意
$\begin{cases} \boldsymbol{a\gt 0}\ のとき&\boldsymbol{x\lt\dfrac{b}{a}}\\[5pt] \boldsymbol{a\lt 0}\ のとき&\boldsymbol{x\gt\dfrac{b}{a}}\\[5pt] \boldsymbol{a=0}\ のとき&\begin{cases} \boldsymbol{b\gt 0}\ ならば&\boldsymbol{解は全ての実数}\\ \boldsymbol{b\leqq 0}\ ならば&\boldsymbol{解なし} \end{cases} \end{cases}$
(2)※いったん不等式を解き、$x\gt 9$ と一致する条件を考える。
$\begin{cases} a\gt 0\ のとき&x\gt a^2\\ a=0\ のとき&解なし\\ a\lt 0のとき&x\lt a^2 \end{cases}$
であるから、$ax\gt a^3$ の解が $x\gt 9$ である条件は
$a\gt 0$ 且つ $a^2=9$
$\therefore$ $\boldsymbol{a=3}$
(3)
$p(x+1)+q(x+2)\gt 0\Leftrightarrow (p+q)x\gt -p-2q$ より
$p+q\geqq 0$ のとき、$x\lt 1$ になりえないから
$x\lt 1$ である条件は
$p+q\lt 0\cdots①$ 且つ $-\dfrac{p+2q}{p+q}=1\cdots②$
$②$より $p=-\dfrac{3}{2}q$ であるから
$①$より
$\begin{eqnarray} -\dfrac{3}{2}q+q&=&-\dfrac{1}{2}q\lt 0\\ &\Leftrightarrow&q\gt0 \end{eqnarray}$
よって、
$\begin{eqnarray} &\ &p(1-x)+q(2-x)\gt 0\\ &\Leftrightarrow&-\dfrac{3}{2}q(1-x)+q(2-x)\gt 0\\ &\Leftrightarrow&\dfrac{1}{2}qx\gt\dfrac{1}{2}q\\[5pt] &\Leftrightarrow&\boldsymbol{x\gt 1}\quad (\because\ q\gt0) \end{eqnarray}$
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