絶対値に関する問題を解く際には、まず絶対値をはずすことが必要である。基本的な性質をきちんと押さえていれば怖がる必要は全くない。きちんと理解して、絶対値に苦手意識を持つことがないようにしてほしい。
絶対値とその性質
数直線上における原点($0$)から点$a$までの距離をその実数の絶対値といい$\textcolor{red}{\vert a\vert}$と表す。絶対値は距離を表すものであるから$\textcolor{cornflowerblue}{\vert a\vert\geqq 0}$であり、$\textcolor{cornflowerblue}{\vert a\vert=\vert -a\vert}$である。
絶対値を含む式の計算を進めるには、何とかして絶対値をはずすことが必要である。ではどのようにすれば絶対値をはずすことができるのであろうか。
この絶対値をはずすのは意外と単純である。中身が正($+$)であればそのまま外してしまえばよく、中身が負($-$)ならば正にすることで外すことができる。
ではどのようにすれば“負を正にする”ことができるのであろうか。絶対値の中身が$-5$ などのように具体的な負の数なら $-$ をとれば正の数にできる。しかし、 $\vert a\vert$ $(a<0)$のように見かけ上 $-$ がついていない場合はどうすればよいであろうか。答えはシンプルである。$-$ をつければよいのである。$a<0$のとき、$-a>0$ だからである。
絶対値についてまとめると以下のようになる。
$\vert a\vert\geqq 0$
$\vert a\vert=\vert -a\vert$
$\begin{eqnarray}
\textcolor{hotpink}{\vert a\vert}= \begin{cases} \textcolor{hotpink}{a}&(\textcolor{cornflowerblue}{a\gt 0})\\
&(\ \textcolor{limegreen}{中身が正ならそのまま外す}\ )\\[5pt]
\textcolor{hotpink}{0}&(\textcolor{cornflowerblue}{a=0})\\[5pt]
\textcolor{hotpink}{-a}&(\textcolor{cornflowerblue}{a\lt 0})\\
&(\ \textcolor{limegreen}{中身が負なら-をつけて外す}\ ) \end{cases} \end{eqnarray}$
${\vert a\vert}^2=a^2$
${\vert a\vert}{\vert b\vert}=\vert ab\vert$
$\dfrac{\vert a\vert}{\vert b\vert}=\left| \dfrac{a}{b}\right|$
絶対値の性質はこれだけである。
以下の例題で実際に絶対値の処理になじんでほしい。
例題に挑戦しよう
≪問題≫
[1] 次の式の絶対値をはずせ。
(1) $\left| 2\sqrt{15}-3\sqrt{7}\right|$
(2) $\left| \pi -\sqrt{10}\right| +\left| 2\sqrt{3}-\pi\right|$
(3) $\left| x^2 \right|$
(4) $\left| \sqrt{3}-x\right|$
(5) $\left| x-1 \right|\left|x-2\right|$
≪解答・解説≫
[1]※(4), (5) は方程式・不等式の学習内容を含む。
(1)※$2\sqrt{15}-3\sqrt{7}$ が正負のどちらであるかを考える。
$2\sqrt{15}=\sqrt{60}$, $3\sqrt{7}=\sqrt{63}$ より
$\begin{eqnarray} &\ &\left| 2\sqrt{15}-3\sqrt{7}\right|\\[5pt] &=&-\left(2\sqrt{15}-3\sqrt{7}\right)\\[5pt] &=&\boldsymbol{3\sqrt{7}-2\sqrt{15}} \end{eqnarray}$
(2)※$\pi -\sqrt{10}$, $2\sqrt{3}-\pi$ がそれぞれ正負のどちらであるかを考え、絶対値をはずしてから互いを足す。
$\pi=3.14\cdots$, $\sqrt{10}=3.1622\cdots$, $2\sqrt{3}=3.464\cdots$ より
$\begin{eqnarray} &\ &\left| \pi -\sqrt{10}\right| +\left| 2\sqrt{3}-\pi\right|\\[5pt] &=&-\left(\pi -\sqrt{10}\right)+\left(2\sqrt{3}-\pi\right)\\[5pt] &=&\boldsymbol{2\sqrt{3}+\sqrt{10}-2\pi} \end{eqnarray}$
(3)※実数の2乗は必ず正。
$\begin{eqnarray} &\ &\left| x^2 \right|\\[5pt] &=&\boldsymbol{x^2}\qquad\left(\ \because\ x^2\geqq 0\ \right) \end{eqnarray}$
(4)
$\begin{eqnarray} &\ &\left| \sqrt{3}-x\right|\\[5pt] &=& \begin{cases} \textcolor{palevioletred}{\sqrt{3}-x\geqq\ 0}\ つまり\ \boldsymbol{x\leqq\sqrt{3}}\ のとき\\[3pt] \qquad\qquad\boldsymbol{\sqrt{3}-x}\\[5pt] \textcolor{palevioletred}{\sqrt{3}-x\lt\ 0}\ つまり\ \boldsymbol{x\gt\sqrt{3}}\ のとき\\[3pt] \qquad\qquad\boldsymbol{x-\sqrt{3}} \end{cases} \end{eqnarray}$
(5)
$\begin{eqnarray} &\ &\left| x-1 \right|\left|x-2\right|\\[3pt] &=&\left|(x-1)(x-2)\right|\\[3pt] &=& \begin{cases} \boldsymbol{x\leqq 1,\ 2\leqq x}のとき\\[3pt] \qquad\quad\boldsymbol{x^2-3x+2}\\[5pt] \boldsymbol{1\lt x\lt 2}のとき\\[3pt] \qquad\boldsymbol{-x^2+3x-2} \end{cases} \end{eqnarray}$
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